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終わりなき女達の戦い? Votes for Women @Museum of London

Vol.75
London Art Trail 笠原みゆき

ロンドン博物館 (Museum of London) 地下鉄バービカン駅またはセントポール駅から徒歩5分。

英国において女性が参政権を取得してから今年で100年。それを記念して各地で様々な催しが行われています。ここロンドン博物館でも一年間に渡り、主に博物館の収蔵品を使った展示やワークショップ、トークなどのイベントが催されています。

ロンドン博物館の一角で'Votes for Women' と題して一年間にわたって婦人参政権をめぐる展示や催しが行われている。

さて、私が訪れた際は Keeping Alive the Suffragette Spirit 「婦人参政権活動家(サフラジェット)の精神を存続させよ」という展示を開催中。

©Museum of London/Vaquera

エプロンに大きく書かれた文字は高級ブランド名?ではありません!婦人参政権運動のスローガンであった'Votes for Women' 「女性に参政権を」と書かれたエプロンをかけて集会を呼びかけている婦人参政権活動家、Vera Wentworth。1909年当時の写真ですが、正面を見据えるウェントワースに対して周りで男性や男の子が嘲笑うように取り囲んでいるのが印象的です。左はというと同じデザイン、同じ文の書かれたエプロンに真紅のドレスを着た女性。こちらは小説「侍女の物語」(原題:The Handmaid's Tale,1985年) を基に描いたアメリカのTVドラマシリーズ(2017ー2018年)の衣装を担当したVaqueraのアダプテーション作品。原作はカナダの作家のマーガレット・アトウッドのベストセラーで、近未来のアメリカで内戦によって成立した全体主義国家を舞台に、女性が"侍女"と呼ばれ性と生殖の奉仕を強制されるディストピアを描いています。また話の中で"侍女"は赤い服を着せられています。アトウッドはトランプ政権下でこのドラマシリーズを見せる意義は大いにあるとその脚本も書き下ろしています。日本では現在シリーズ2を公開中。

©Museum of London

“The Power of Her, 2017" ©Francesca Smith

英国のサフラジェットを有名にしたのは何と言っても器物破損や放火、爆弾テロなど、その過激で好戦的な直接行動。現在でも是非のあるその手法ですが、当初は法にかなったキャンペーン、リーフレットの発行、大会の組織、請願の提出などを行っていたものの、ほとんど効果が上がりませんでした。そこで、効果が見込めるなら直接行動しかない!という追い込まれた境地から生まれたのがエメリン・パンクハースト(Emmeline Pankhurst)の率いる戦闘的サフランジェット組合、女性政治社会連合(Women's Social and Political Union, WSPU) 。上の写真はWSPUのメンバーが使った道具。ハンマーに鞭、棍棒、鎖と何とも物々しいです。ちなみにハンマーは主に窓ガラスを破壊するのに使われましたが、もとはイギリスの伝統なハードクラックキャンディ、“トフィー"(食べたことあるかな?とっても硬いヤツです)を割るためのもので女性が容易に手に入れられ懐に忍ばせておけました。 さて真ん中の鍵と錠のついたベルト、気になりますね。これはボディベルトと呼ばれるサフラジェットが自らを政府の建物の柵に縛り付けロックしておくためのベルト。サフラジェットは警官が彼女達の服の下に手を入れて錠を外すのを嫌がるのを知っていました。下の写真はFrancesca Smithの作品、“The Power of Her, 2017"。ベルトにはサフラジェット達の名前が縫いこまれています。

ハンガーストライキバナー。Ann Macbethのデザインで1910年作 ©Museum of London

ハンガーストライキ中のエメリン・パンクハースト。10回にわたってハンガーストライキを行なった。©Museum of London

当時1300名以上の女性が戦闘的な活動に参加することによって収監されましたが、収監理由のほとんどは治安妨害や罰金未払いなどで、当初は政治犯としては扱われませんでした。そこで彼女達はハンガーストライキを実行します。その後多くのサフラジェットがこれに続き、政治犯としての扱いを拒否されたことに抵抗して食を断つのはサフラジェットがよく行う戦略となったのです。次の写真は監獄内でハンガーストライキを実行し、その過酷さから命を落としていった80名のサフラジェットの名前を刺繍したバナー。Ann Macbethのデザインで1910年に制作され、サフラジェットのシンボルカラーである紫、白、緑の三色をあしらっています。

現代のホロウェイ監獄でのパッチワーク作品の一部。2012年作 ©Museum of London

ヨーロッパ最大の女性監獄といえば、ロンドンのホロウェイ監獄。当然ながらサフラジットの多くもここに収監され、政府はハンガーストライキに対抗するため、 強制摂食を行うなど女性の権利を巡って壮絶なバトルが繰り広げられた場所でもありました。2012年、この監獄で前記のバナーを基にワークショップが行われました。女性囚人に綿の正方形の布を渡し、刺繍、インクや絵の具で「希望」を表現してもらうというもので、それらを繋いで大きなパッチワーク作品を作り上げました。写真はその一部分。

1950年にサフラジェット・フェローシップからの寄贈を受け、ロンドン博物館は膨大なサフラジェットのアーカイブ、オブジェや写真などの資格資料を収蔵しました。サフラジェット・フェローシップは1926年にWSPUと共に戦ったWomen's Freedom League(婦人解放連盟)の元メンバーによってサフラジェットの遺産をその後の世代へ伝えるため設立されたものです。収蔵品には囚人として服役を余儀なくされた女性達の個人的な遺品も数多く含まれていて、訪れた人々の目を釘付けにしていました。

Profile of 笠原みゆき(アーチスト)

笠原みゆき

©Jenny Matthews

2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。

ウェブサイト:www.miyukikasahara.com

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