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エモーショナルインテリジェンスはフォースの覚醒

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.133
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木 光

去年の年末にコマーシャル関係のパーティーなどに顔を出していたら
驚く事に、よそのプロダクションの若い人達に挨拶される事がちょくちょくありました。
ここの僕のコラムの、CMプロダクションで働く人たちに向けて書いている文章を、
何社かの会社で新人の研修に使ってもらえてるらしく、そのおかげで読んでいる人がいるそうです。
光栄ですが。恥ずかしいものです。

同じ会社の若い奴は、正月に実家に帰ったら、お父さんが
これ読んだ方がいいぞ、とプリントアウトしてくれた文章が
僕のコラムだったってゲラゲラ笑っていました。笑ってんじゃねえ。

そんなこんなで、読んでくれている人がいるならば佐賀弁のコラムを
書いて喜んでいないで、今月は業務関係の事を書いてみようと思いました。

エモーショナルインテリジェンスという言葉があります。

平たく言うと、自分に降り掛かってくるあらゆる問題に対して向き合える
想像力や忍耐力、切り抜ける力、というところでしょうか?

エモーショナルインテリジェンス(EI)というものは
人と対峙したときに、自分と他人の間にある、目に見えないものが理解できるのか?という事が問題だからです。

EIの高い人は、自分の感情と考えを分けるトレーニングができているそうです。
自分にわき起こった感情を押し殺すんじゃなく、分析します。どうしてそう感じるのか?と。
自分の感情をコントロールする術を知っているとも言えますね。
何か起こっても、衝動的に怒ったりたり、泣いたり、びっくりしたりせず、
その先にある大事なものはなんなのか考えて行動するということです。

そして、自分と自分に起こることについて、好奇心が旺盛。
これから何が起きるのか?と、相手にとって何が一番大切なのか?を知るのが好きです。
そこから答えを導きだすといい事があると知っているからでしょう。

これらは、生まれつきな能力ではなく、後天的に経験の中で覚えていける能力でもあるそうです。

人は言っている事と思っている事が違います。そこの差を埋める思考をしなきゃいけない。
そもそも対峙している人がどんな人なのか?
絶妙な質問を繰り返したり、態度や会話の中からヒントを導きだしたり。

対人だけではなく、自分に責任のある物事でトラブルが起きたとして、
そのトラブルとどう向き合うか?どうおさめるのが最善策なのか?
ネガなことがおきても、大きい視点で全体を見てトラブルに対処する能力だとも言えます。

これまで、世の中があまりに人間の感情っていうことを無視し
数字とか学校とかそういうのでしか人の価値を判断できなかったために、
人類が機械的になっている、という事に気がついた方がいいと思うんです。

実はCMのプロデューサーやプロダクションマネージャーにはこの能力がかなり必要です。

CMのプロダクションマネージャーから入って、経験を積んでプロデューサーになる。
プロダクションマネージャーには、専門職のスタッフと違って手に職がありません。
だから技術者にやってくださいとお金払ってたのまなければならない。だから軽く見られたりする。
家庭でいうとお母さんみたいな役割なので、とにかくみんなからの要求が多くそれをちゃんと全部こなさないと文句を言われます。

会社からは、うまいことやって利益を出せ、商売なんだからと圧力が強い。
最近はコンプラとかなんとか言って下らない失敗することを凄く嫌われる。
スタッフは少しでもいいものを作りたいのであれが欲しいこれが欲しいと要求してくる。
このジレンマの中に生きている。
稼ぎの少ない旦那(プロデューサー)のせいで家計のやりくりに苦労したり、
泣き止まない子供(スタッフ)をなだめる事ができずに育児ノイローゼ気味になったりします。
私がナニしたって言うのよ!

もう大変です。難しい仕事だと思う。自分がやってるときも大変でした。ぼこぼこにやられました。
くやしいなあ、ちくしょう、ぶっころしてやる。そういう感情をいつも持っていました。

そんな中で考えたのは、何をどう準備しておけば、関わっている人が喜んでくれるのか?という点でした。
怒って暴れても、凹んでイジケテも仕事にならないからです。
お金もらってやっているんだから、俺の感情はちょっと置いといて、やることやろう。
やってうまく行ったら嫌味の一つでもかましてやるか。悔しいから、と。

そう思って仕事をしていると、部下を使わなくちゃいけない立場になり、丁寧に自分がどう思って仕事をしているかと説明したりもしたけど、そう簡単に分かるわけもなく。
弱音を吐いたり不貞腐れたりする部下を怒鳴ったり蹴ったりしていました。
なんか違うよなあと思いながら。部下のすることの責任は僕にあるからです。必死でした。

お客さんにも、会社の管理にも、プロデューサーにもスタッフにも、部下にも同じ態度で仕事をするというのが理想です。

よくよく考えてみると、答えはスターウォーズにありました。
ジェダイにならなきゃいけないのか!そうか、スターウォーズはそういうことを言ってるんだ。
感情に支配されるな。見えないものを感じるようになれ。フォースを使え。
それがわかった時には、部下の人格は否定せず、足りなかったことをキツめに指摘すると言う態度に変えることにしました。

エモーショナルインテリジェンスとはフォースのことだったのです。
プロダクションマネージャーの頃はジェダイになる修行をしているんだ。
フォースを身につけたら仕事をうまくコントロールできるようになるんだろう。
そしたらプロデューサーになれるんじゃないか?

プロデューサーになってみてわかりました。
プロデューサーの仕事の大半は人心掌握術だったからです。
フォースの覚醒が必要だったのです。

それは、自分のことをよく分析できていて、相手の感情をおもんばかり、
問題が起きても慌てず、大事なことはなんなのかをいつも忘れない。
状況を打開するためには損をしても、それが後から得になるようにする。

マネージメントという名前のついた職業の人にはみんなフォースが必要なんですね。
後天的に身につけることができるということは、色んな挫折も味合わなきゃいけないだろうし、成功体験はもっと必要。知識が多かったり、実際にこの目で見たことのあることが多いに越したことはない。色んなチャンスに積極的に関与したがるべきだ。当事者意識を強く持ち、矢面に立って問題に対処して、人の言わないような意見を言うのを心がけ、凄みのある説得力すら身につける。怒られることを怖がらない。そう言うことに気をつけて仕事をすると言うことがフォースを持つ人、つまり、エモーショナルインテリジェンスのレベルが高い人、と言うことになるんでしょう。

その修行の途中だと思ったらプロダクションマネージャーの仕事は頑張れると思うんです。上司や監督に言われたことをめんどうくせえと思ってただこなすのではなく、このCMを作るのに、せっかく関わったんだから、俺が何をしたらもっと良くなるかという観点をブラさずやってくれたらうまくいくと思うのです。こっちの方が良くないですか?と積極的に発言してほしい。若いってだけでアドバンテージはあるんだから。

今は御用聞きかもしれないけれど、日本一の御用聞きの人には、誰も御用聞きの扱いはしないと思うのです。フォースを身につけてほしい。そしたらビビったりしないで仕事ができるようになるでしょう。

フランク・シナトラの名言に、
「人生で一番大切なことは、ビビらないことですよ」
と言うのがある。
これがわかれば、せっかく始めた仕事を簡単に辞めたりしなくて済むんじゃないかと思うのです。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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