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帯状疱疹になっちゃった

番長プロデューサーの世直しコラム Vol.130
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

帯状疱疹という病気になりました。
なんじゃそりゃ?でした。そんな病気知らなかったからです。

近々にあった撮影の予定が、ある日いきなり二つなくなってしまいました。
それで1ヶ月くらいスケジュールが真っ白になっちゃった。
「やばい」と「しめた」という感情が同時に起こりました。
会社の売り上げを考えると「やばい」
休みが取れることを考えると「しめた」です。
心の中では「しめた」が勝り、すぐさまハワイに行こうと思いました。
やったぜ。
家に帰ってiPadですぐさま飛行機のチケットを探していました。
そしたらだんだんだるくなってきました。
なんだろうなあ、風邪かなあ?気が抜けるといつもこれだ。
ハワイに行くモチベーションと戦わせてやろう、と思っても
一向に良くなりません。
体が痛くなってきました。
あれ?これ重症かも、と思い、次の日の朝病院に行きました。
いつも行くお医者さんは「風邪だねえ。喉が真っ赤だよ」と。
「でもね、先生、なんかね体の右側がめちゃくちゃ痛いんですけど」
「熱があるからだよ」ということになって風邪薬をもらって帰りました。

家に帰って風呂に入ろうと思って裸になったら、鏡に映った自分の
肩あたりに赤い発疹ができてるのに気づきました。
おりょ?iPadで調べたらなんとなく帯状疱疹って病気のようです。

皮膚科に行けと書いてあったので、近所の皮膚科を探して行くことにしました。
「あらー典型的な帯状疱疹ですねえ」「やっぱりそう?」ということで
薬を処方されました。風邪じゃねえじゃねえか!

初めて行く病院で初めて行く薬局。大きくて広い薬局。処方箋を渡すと、
「この薬はジェネリックもありますけどそうしませんか?」と薬剤師が聞いてきました。
「ふーん、ジェネリックって効くんですか?」
「成分は全く一緒なので」みたいなやりとりがあり、値段を聞いたら
ずいぶん安かったので、じゃあそうする、ってことになりました。
それでまた薬をもらって帰りました。それが木曜日。

その時点で、病状が辛くなっていたので、おとなしく寝ていようと思って薬を飲んで寝ていましたが、
発疹が背中の肩甲骨から右の二の腕までびっしり出ていて、仰向けには寝れません。
うつ伏せに寝ていたら腰が痛くなってきます。割れたガラスの粉を皮膚にすりこんでいるような痛みで、寝返りをうつだけで強烈な痛みに襲われます。ひっ!となる。
これじゃ寝れねえじゃん。やってらんねえ。仕方ないからiPadで帯状疱疹について調べることにしました。医者も説明するのが面倒だと見えて、『帯状疱疹とは』という説明書をくれていたので、それと合わせて読んでみました。
書いてある病気の内容は恐怖の内容でした。

子供の頃にかかった水疱瘡のウィルスが体の中に残っていて、疲れたりすると出てきて悪さをする。
なるべくはやく抗ウィルスの薬を飲んだほうがいいことと、治りが悪いと後遺症が残ってしまう。原因はストレスでイチバンの薬は睡眠と休養。痛くて寝れないのに睡眠が大事。

心配になってきた。金曜日、会社を休んで丸一日、薬飲んで寝ていたけど、(発症したばっかりというのもあるだろうけど)全く症状が改善されなかったからです。あ、ジェネリックにしなきゃよかったのか? 後遺症?この痛いのが残るってのか?やなこったいだな。

気持ちだけの問題ですが、こんなに変な病気なのに、金をケチって治りが悪いってことになっちゃ嫌なので、薬をオリジナルの薬に戻してもらおうと思って土曜日の朝一で皮膚科に電話したらもう休みでした。嫌な予感。そこから三連休だったからです。ならばと薬局に電話したら有難いことに営業中。ことの顛末を話したら一言、「法律に反するので薬の交換はできません」でした。

法律な、はいはい、と思って薬局にすぐ行きました。で、電話に出た薬剤師を捕まえてもう一回聞きました。
「も一度言うぞ、お前んとこでもらった薬飲んでるけど全然良くなる気配がない。根拠はない。病気の説明によると後遺症で苦しむ場合もあると書いてある。心配で仕方ないから、俺は何らかの手を打たないといけない。心配事を取り除くとすると、ジェネリックがダメかどうかは知らないが今はそこしかない。もらった薬が効いているいないについては何の根拠もないが。後から後遺症が残ったり、悪くなったりした時に諦めがつかないから、医師が処方した薬に戻してくれと言っている。それはわかるか?」

「わかりますが、それで薬を戻すのは違法なのでできません」

「違法はわかったけどさ、できませんって胸張っていうなよ。色々心配な病気になった人しか君のところには来ないんだからさ。今からお医者さんに電話してみます。とかさ、こうしたらあなたの心配事は払拭されますよとか、アイディアだよ、企画な。それを出して欲しいんだけど」

「いえ、違法だからできません」
こいつ話にならん。はいはい、じゃあね、ばいばい、と言って他のお医者さんに行くことにしました。

最初に風邪だと診断した、いつも行きつけの病院はやっていて、こうなっちゃったんですけど〜とできものを見せて、ことの顛末を説明したら
「あら〜立派な帯状疱疹ですねえ、ちゃんと新しい薬出すから安心しなよ。ところで、その皮膚科で保険使ったよね?」
「もちろん」
「そしたら今回の薬には保険効かないんだよね。もう、一回この案件で薬は出されているから。悪いけど全額払ってくれる?」
「えー、そもそもあんたが風邪だとかいうからこうなってんじゃないの?」
「見抜けなかったねえ、今回は。ごめんね」
ということになって、これまた行きつけの薬局で薬をもらったら2万3千円払うことになりました。セカンドオピニオンには保険が効かないことがわかりました。

踏んだり蹴ったりです。

そもそも何がいけなかったのか、寝ながらクヨクヨ考えました。
ジェネリック医薬品(後発医薬品)は、これまで有効性や安全性が実証されてきた新薬と同等と認められた低価格なお薬、です。効き目そのほかに関してはここで書いちゃうといろんな問題が僕に起きるので書きませんが、いい点は、研究開発費がかかっていない分、価格が安いことです。近年、国全体の医療費が増えて健保組合や国の財政を圧迫している。だから国がジェネリック薬を推奨しています。会社で新しい保険証をもらったら「ジェネリック薬品を希望します」とわざわざ書いてある。それが嫌な人はそこにテープを貼って消すようになっているんです。それほど大事な案件なんだろう。
そして当然、患者さんは、払うお金が安く済むし症状も緩和され助かる。
両方にいいことがある、ということになっています。

処方箋については、今年の四月に法改正があり、医者は処方箋に薬の名前じゃなくて成分の名前を記入することになったそうです。そうなると、効き目重視でオリジナルの薬を選ぶのか価格重視でジェネリック薬を選ぶのかのアドバイスをするのは薬剤師の役目ということになります。処方箋を見せてもらいましたが、絶対ジェネリック薬じゃダメだと医師が判断した場合のみ、「ジェネリックはダメ」的なハンコを押す欄があって、そこにその理由を医師が書かなくてはいけないことになっているそうです。

なんか、そういうことについてほとんど無関心だったのが今回の敗因だったと言えます。ジェネリック?黒柳徹子か、ってくらいの認識でジェネリックが何なのか、何が良くて何が悪いのか?考えてもいなかったのです。
帯状疱疹という病気についてもそうです。軽く聞いたことはあったけれど、これほどひどい病気とは思っていなかった。

ジェネリックを勧めた薬局は、入ってくる患者全員一人一人に、処方箋を見るなりジェネリックにしませんか?とすごく丁寧に勧めていました。そりゃあ国策なんだからさもありなん、なんだと思う。
そういう時に、ジェネリックの良し悪しがちゃんとわかっていたらちゃんと自分で判断できるだろう。今回はジェネリックでもいいとか、今回は心配だからジェネリックはヤメときます、とか。自己責任の範疇であるんです。

とか何とか言っちゃって、本当は一番腹が立ったのは法律家のような薬剤師ですね。人がどういう状況にあろうがなかろうが、「法律に反するので薬の交換はできません」と胸を張って言い切っちゃうのは立派なやつだけれど、それだったらいっその事、お前は自動販売機でもいいんじゃないかと思う。人がいて対面でめんどうくさい客が来た時にどう対処するか?で仕事の本質が見えてくるものです。俺もこいつみたいな態度を取れたらどんだけ楽なんだかと思いました。

皮膚科の医者も医者で、病気について説明するのが面倒くさいのか何なのかわかりませんが「帯状疱疹について」と書かれた一枚の紙をぽいっと渡して「読んでみてください」と言った。驚きました。地味で若いおしゃれな女医。
コミュニケーションが苦手だったら医者なんかにならないほうがいい。
医者の丁寧な説明や、これからどうして行くかと語られたビジョンで、弱っている心がどれだけ救われるのか?お前もハワイに入国する時のような自動イミグレ機みたいなので事足りちゃうぜ。

結局二週間も寝たままになっちゃうんですけど。

薬局や病院が悪いんじゃなくて、出会ったたった一人と噛み合わなかっただけなんだけど、二度とその皮膚科と薬局にはいかないと思います。近所の誰かに聞かれたら、あそこヤメたほうがいいよとしか言いません。初診の時の病院の印象ってとっても大事なんですね。そうやって行くうちに客ってのは減るのです。自分の仕事に置き換えるとめちゃめちゃ怖くなりました。

世の中の風潮を見ていても、どんな仕事も、どんどんそういう風になって行くような気がするけれど、それなら、自分でネタは仕込んでおかなきゃいけないということでしょうね。そうしないと予期せぬ判断を迫られた時に間違った判断をしてしまうことになるからです。 誰か23000円返して欲しい。靴一足買えるだろ!と思いました。

病気になった本人が一番へぼいんですけどね。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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