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COLUMNコラム・ザ・ちゃんこ

まずはお茶をどうぞ! @DRAF

Vol.61
London Art Trail 笠原みゆき

DRAFの入り口



地下鉄モーニングトン・クレセント駅を出て、カムデンハイストリートを渡り、すぐ脇の小道に入って倉庫のような建物の中に入るとそこはティールーム!でもよく見ると、各々の椅子の足や肘掛けは色も形もチグハグだし、積まれた本はテーブルの下敷きになってるし、手作り感のある大きなティーポットは本当に使って大丈夫?という感じで何か変。そう、ここは現代美術ギャラリー、David Roberts Art Foundation, 通称DRAF。ギャラリーでは現在、年に一度外部の、主に海外のキュレーターにゲストとして展示企画をしてもらう、キュレーターシリーズの展示が行われてます。今回はリスボンを基盤にするキュレーターデュオ、Kunsthalle Lissabonによるアーティストの紹介です。



GDM future franchise, 2017 © Laure Prouvost



さて、先程のティールーム、実は、Laure Prouvostのインスタレーション、GDM future franchise, 2017 。GDM?は何の略かというと、Grand Dad's Museumのことで、Prouvostが続けるお祖父さんの架空の美術館シリーズ。このシリーズは会場で来場者が作品の一部となってお茶を飲んだりおしゃべりしたり出来るのがポイント。並んでいる椅子や本、ティーポットは2013年にターナー賞を受賞した彼女の映像作品でもお馴染みのスタイルで、映像の中でも画家のシュヴィッタースとティーパーティーをする彼女の“お祖父さん"が現れます。

No Future in that place, 2012 © Diogo Evangelista


橙色の光の中、 全裸でリラックスしながらダンスや音楽、エクササイズを楽しむ人々。作品は Diogo Evangelistaの“No Future in that place, 2012"で、自然回帰を提唱したドイツのナチュラリスト(またはヌーディスト)の運動である、Free Body Cultureの記事を載せた20世紀初頭の雑誌のイメージをもとに制作したもの。裸体がギャラリーに並んでいても何の違和感も涌きませんが、これが街中で裸の人々に出くわすとなると別の話。以前街中で、全裸で自転車に乗る人々の集団に出くわしたことがありますが、これはNaked Bikeと呼ばれる車両の排気ガスによる環境汚染に抗議する運動でした。 近年では戦争や環境破壊などへの反対するためグループで全裸になり、抗議するケースが見られますが、厚い鉄板で出来た車の脇を一糸まとわぬ姿で自転車で走り抜ける人々の姿は何とも危うくはかなく見えたのが印象的でした。

The Double And The Half (to Avery Gordon), 2014(© Amalia Pica)&Paperwork #148, Paperwork #156 & Paperwork #158, 2016(© Céline Condorelli)




机を支えるのは大、中、小の脚立、次第に大きくなっていく脚立の一番下には、“上るのは勝手ですが、自己責任でお願いします。"と書かれた紙が。そこで、早速上ってみます。上った先に見えるものは?作品はAmalia PicaCéline Condorelli のコラボレーション、The Double And The Half (to Avery Gordon), 2014(Picaの作品)とPaperwork #148, Paperwork #156 & Paperwork #158, 2016(Condorelliの作品)。異なる言語で書かれた“支払済!"などの会計印を使って子どものいたずらのようなイラストを描くPica 。一方の、Condorelliは脚立と机だけでなく、アメリカの社会学者のAvery Gordonとの対話など、友情について専門家達と語る自著“The Company She Keeps(2014)"をさりげなく机に置いて作品に深みをもたせています。

Dinosaurs, 2012 © Mounira Al Solh


仲の良い友人達が集まった飲み会。ビール瓶の数が増すにつれ、言動や行動がエスカレートしてきて……。 最後はこちら、Mounira Al Solhの “Dinosaurs, 2012" 写真は五つのビデオインスタレーションで構成される作品の中の一つ。 映像は全てアラビア語で字幕もないため、何をいってるのかさっぱりわからないもの、見ていくうちにだんだん筋書きがわかってきます。見回すとどうやらどの作品も酒と人間関係というのがテーマの様子。実は5つの作品は全て、インディペンデント映画のパイオニア、ジョン・カサヴェテスの5つの映画の1シーンを友人達に演じてもらって再現したもの。酒と人間関係のシーンに焦点を当てることで、親密な関係のダークサイド ― 対立、怒り、友情の崩壊、孤独などが浮かび上がってきます。

社交、友情、ソリダリティーやコミュニティーにテーマを当てた今回の展示。みていくなかで、ふと、美術の世界も一種のコミュニティーみたいなもので、アーティスト達やキュレーターが、無意識のうちに関係者以外の人にはわからない言語を使っていたり、分かりにくい作品を作って、内と外との間の垣根を作ってはいないかなどと考えさせられました。


Profile of 笠原みゆき(アーチスト)

笠原みゆき

©Jenny Matthews

2007年からフリーランスのアーチストとしてショーディッチ・トラスト、ハックニー・カウンシル、ワンズワース・カウンシルなどロンドンの自治体からの委託を受け地元住民参加型のアートを制作しつつ、個人のプロジェクトをヨーロッパ各地で展開中。
Royal College of Art 卒。東ロンドン・ハックニー区在住。

ウェブサイト:www.miyukikasahara.com

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