映像2016.10.26

粗忽刑事杉下右京

とりとめないわ 第14話
とりとめないわ 門田陽

見覚えのない赤いランプが点滅しています。何だろう?と気になったのは付けっぱなしのテレビの前でコンビニ弁当を食べていたときでした。赤いチカチカはふだんそれほど使っていないブルーレイのデッキから出ていました。

リモコンを探して確認したところわかりました。原因は「相棒」です。この秋に始まったドラマ相棒の新シリーズ(「相棒シーズン15」)を見逃さないように10月頭に予約録画をしたのですが、やり慣れないことはしないに限りますね。ボタンの押し間違えか、僕のカン違いで「相棒」というワードのもの全てが録画される設定になっていたようです。そのためにおきた容量オーバーを知らせる点滅ランプだったのです。

いやいやそれにしてもテレビ朝日は相棒に頼り過ぎ。10月3日からわずか半月の間に こんなにやっています(東京地区)。

10月3日(月)相棒14第4話「ファンタスマゴリ」 10月4日(火)相棒14第5話「2045」 10月6日(水)相棒14第7話「キモノ奇譚」 10月10日(月)相棒13第15話「鮎川教授最後の授業」 10月11日(火)相棒13第16話「鮎川教授最後の授業・解決篇」 10月12日(水)相棒15初回2時間スペシャル 10月13日(木)相棒7第18話「悪意の行方」 10月17日(月)相棒8第18話「右京、風邪をひく」 10月18日(火)相棒7第14話「男装の麗人」

そりゃ家庭用のハードディスクじゃ容量すぐにいっぱいです。せっかくなので、見ました一気に。で、前から薄々気が付いてはいたのですが右京さん(水谷豊)はかなりな粗忽者だとはっきりしました。ファンに怒られそうですが(僕もファンです)、タイトルが「粗忽刑事(そこつでか)」だったらヒットしなかったに違いない。彼の幅広い分野における十分すぎる知識と明晰な頭脳やときおり見せる人並以上の身体能力などは凄いのですが、それらを差し引いても余りあるほどのサザエさんレベル以上のうっかり。しかしそれがこの人の魅力なのではないでしょうか。

右京さん、何話かに一回は「僕としたことが、迂闊でした」または「僕としたことが、とんでもない間違いをしていたようです」と言います。このコトバが出ると物語は急転してさらに人が死んだりするのです。毎回なかなかのいい台詞があったりテーマがちゃんとしているのでなぜかみんな突っ込みませんが、僕は右京さんのこの人間っぽいダメなところが好きでたまりません。

右京さんの口癖「細かいところが気になるのが僕の悪いクセ」のしつこさ。「最後に一つだけよろしいですか」といういやらしさ。「僕はうれしくはありませんが」という自己主張。「亀山くん、君にしては上出来です」という自己中心。 「ご随意にどうぞ」という負けず嫌い。そのどれもが愛おしくて胸が高鳴ります。ついでなので、僕が大好きな刑事ドラマのもう一つ「古畑任三郎」の古畑警部(田村正和)が右京さんの相棒だったら。

事件を前にした二人の会話

古畑「え~、今回の犯人は実に手強いです」 右京「僕としたことが、迂闊でした」 古畑「え~、それについては最初から気付いてました」 右京「おやおや?僕はうれしくありませんが」 古畑「ん~、お気持ちお察しします。残念でしたね~」 右京「最後に一つだけよろしいですか」 古畑「え~、まだ続けますか?」

きっと事件は迷宮入りです。

ところで、粗忽という日本語ですが落語以外で使ってるのを聞いたことがないなぁ、という話はまたの機会に。

Profile of 門田 陽(かどた あきら)

門田陽

電通第5CRプランニング局
クリエーティヴ・ディレクター/コピーライター
1963年福岡市生まれ。
福岡大学人文学部卒業後、(株)西鉄エージェンシー、(株)仲畑広告制作所、(株)電通九州を経て現在に至る。
TCC新人賞、TCC審査委委員長賞、FCC最高賞、ACC金賞、広告電通賞他多数受賞。2015年より福岡大学広報戦略アドバイザーも務める。
趣味は、落語鑑賞と相撲観戦。チャームポイントは、くっきりとしたほうれい線。

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