仕事はすればするほど

番長プロデューサーの世直しコラムVol.102
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

結構、本業が忙しくなってきて、たいそう有り難い話ではあるけれど、最近、大きな仕事で、一日に3件それぞれなんらかの問題が発生して、偉い人3人から別々にこっぴどく叱られた日がありました。

46歳にもなって、日に3回、違う人から叱られると、さすがに叱られ慣れていたとしても凹むものです。 よく考えていれば未然に防げた事なのかもしれないけれど、人に任せたり、その後の確認をしていなかったり、たまたまやる事が重なって手が回らなかったりして。何の言い訳もできない内容だった事は確かで、携帯電話を持ったまま、ぺこぺこ頭を下げる、マンガに出てくる昭和日本人サラリーマンの様な姿だったと思います。

そんなこんなで、その日起きた問題たちに対処して、メドが見えたところで家に逃げ帰る事にしました。駅から家まで、とぼとぼ歩きながら情けない気持ちにとらわれていました。何やってるんだかよーと。

22歳でこの仕事に就いて、この夏で47歳になるんだから、CM制作25年。「ど根性ガエル」というマンガに出てくる初老の学校教師、町田先生はいつも「教師生活25年!こんなに悲しい事はない!」とか言いながら泣いてたなあ。とか。あの先生と同じ年か?なんか想像と違うなあ。いくつになっても叱られるんだなあ。とか思いながら、とぼとぼ。

明日の朝ごパン(朝食にご飯ではなくパンを食べること。)とかお茶とかを買って帰ろうと思い、通りかかったコンビニにすっと入って、マンガや雑誌が置いてある棚を眺めていたら、いつもと違うなんか場違いな本が目に入りました。

『田中角栄 100の言葉 ~日本人に贈る人生と仕事の心得』  別冊宝島編集部 編

田中角栄の写真にオレンジ色の文字でタイトルが書かれたその表紙にすごく迫力があったので思わず手に取っていました。 開いて右のページに太い文字で田中角栄の名言が書いてあり、左のページにはその言葉が発せられた状況や時代背景などの説明が書いてある。よくある構成の本でした。 こんな本コンビニで売るんだ?

ぱらぱらとページをめくっていたら、あるページに目がとまり、読んで、びっくりしてしまいました

「仕事をするということは文句を言われるということだ。 ほめられるために一番良いのは仕事をしないこと。 しかしそれでは政治家はつとまらない。批判を恐れずやれ。」

そう書いてありました。

田中角栄に話しかけられているような気分になり、そのページに慰められていました。 ちょっとニュアンスが違って、ちゃんと仕事しなかったから怒られたんですけどね。まあいいや。

うれしくなっちゃって、その本をカゴに入れてパンとお茶と一緒に買って帰りました。 一気に読んでしまい、夜中に清々しい気分になりました。 あっという間に元気になっていました。 言葉ってすごいなあ。単純な人間です。

田中角栄の残した名言をネットで検索してみると

「君たちね、自分の置かれてる立場を有り難てえ事だと、思わんとダメですよ」

「いやなことは、その日のうちに忘れろ。自分でどうにもならんのにクヨクヨするのは阿呆だ」

と書いてある。

以前このコラムに田中角栄のことを書いた事がありますが、そのときにも調べた田中角栄の人物像、落ち込んだ夜にたまたま出会ったこの本に書いてある事を読んで感じた事は、この人は豪快な人ではなくて、緻密に緻密にものを考えて、考え抜いた挙げ句に、それでもダメなら知らんぞ。と、肚(はら)を決めてるんだなあ。という事。

決して独りよがりではなく、他人とのコミュニケーションを大切にして、相手の物差しを使って思考して、地ならしをしてから、豪快な技で自分のやりたい事を通す。という事。

そうじゃなくちゃこんな言葉は出てこない。

「いやなことは、その日のうちに忘れろ。自分でどうにもならんのにクヨクヨするのは阿呆だ」の、「自分でどうにもならん」ところまでやる事はやってから悩むのをやめろ。と、おっしゃっているんだ。

まだまだ足りないなあ。 細かくやって強引に決める。というのがスタイルだったんじゃないのか俺? ちゃんと仕事しよう。と思った夜でした。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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