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100回目

番長プロデューサーの世直しコラムVol.100
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

おかげさまで、このコラムも今回で連載100回目を迎える事が出来ました。

こうやって連載コラムを持つようになったきっかけは、ある有名CM監督に執筆依頼が来ていたこのコラムを、その監督が面倒くさくて書きたがらず、その監督とちょうど一緒に仕事をしていたときに「お前は言葉の言い回しが独特で面白いから文章を書いた方がいい」と急にほめられて、「編集者を紹介するから会ってみろ」と言われて、まんまと乗せられて書くはめになった。という適当なものでした。

最初に書くときに編集者に言われた事は「面白く無くて人気が出なかったら5回で打ち切ります」でした。 5回書けばいいんだな。と思いました。

「コラム」の意味は、語源は円柱。新聞や雑誌のニュース記事の間に隙間としてできちゃった長方形のデッドスペースを埋めるために、ニュース以外の個人的な意見や分析を書く批評的な文章の事を言うそうです。書き手の個人的な分析や感情がはいるので記名の記事になります。囲い記事。

そんなこんなで、軽く考えていたのです。まあ楽勝だろう。 「書きたい事を書きまくってやろう」と。それが間違いでした。 以前にも、当時流行っていたスニーカー雑誌にナイキのスニーカーのうんちくを語るコラムを連載した事があって、3回書いたらネタがつきて謝って書くのをやめた事があるのを忘れていました。

そもそも、ある企業のHPに書いている公式の文章なのだから、書いたものには担当の編集者のチェックが入ります。ブログじゃないので、面白い事を思いついたからって適当な事は書けないのです。書いた事には必ず裏を取らなければいけない。めんどくさくなって、どこかから引っ張ってきた文章を小保方さんばりにコピペすると、なぜかすかさず編集者にばれて、「ここの部分はこのHPからパクりましたね。ここは引用したことにします」とおしかりを受けます。

当然、締め切りもあり、ひと月って言うのはあっという間なので、仕事が忙しいときには、仕事の終わった後に徹夜で書くということも何度かありました。 ただ、自慢は締め切りを破った事は99回目までは1回もありませんでした。

ひと月に1回で100回ということは8年とちょっとです。 最初のころは読んでくれる人も少なく、「なんだこりゃ?」的なもので、平気でバカとかクソとか書いて、それでも笑ってすまされるようなものでしたが、この8年の間にSNS、FacebookやTwitterが普及していくに従って、読者も増えるようになって様子がかわってきました。

テーマが「世直し」なので、世の中の不条理的なものを攻撃する文章を書く事が多いからですが、それをおもしろがられて、ちょっと有名なブロガーの人等にシェアされたりすると爆発的にアクセスが増えるような事が起きるようになっていきました。

ある回では、アクセスが短時間で4万件を超えてサーバーがダウンした時もあります。

そんな時は身の危険を感じるようになりました。 賛同する意見もたくさん頂くのですが、無記名のTwitterなどを覗いてみると、ものすごい誹謗中傷を受けている時もあります。そういうものを目にしてしまうと、気にしない事にしていてもどうしても憂鬱になるものです。

また、書いている本意を理解しない馬鹿が世の中には沢山いて、結論までの文脈の流れで、刺激的な言葉でわざと盛り上げて書いている所だけを引用して、全然違う方向の議論を展開した挙げ句、いろんな人がそれに乗っかって話がスライドして行き、巡り巡って「こいつが悪い」と書かれる事もあります。 「おいおい、そんな話はしてねえだろうよ。大本(おおもと)の話をよく読めよ。」と。

だから、最初の頃のように勢い良く書く事は、今は出来なくなりました。今は言い回しや言葉の使い方、攻撃の仕方などものすごく気を使って書いているんです。これでも。 人は、いろんな立場でいろんな事を思い、いろんな意見があるもんだなぁと。やってみて、危険に晒(さら)されてみて解った事がいっぱいあります。

しかし、そういうことを差っ引いてもコラムを書き続けることでいい事がいっぱいありました。

本人を知っている人にとっては、僕の日頃の生活態度に問題があって、「ただのガラの悪い、もとヤンキーの暴走族上がりの馬鹿で怖い元気なおじさん」と思われがちだったところが、コラムを読んでもらえた人からは、「実はこの人、それほど馬鹿じゃないんじゃないか?」と思ってもらえてるみたいです。

仕事中の会話でも、なんとなく理路整然と話が出来るようになりました。頭の中で、伝えなきゃいけない事、しゃべってはいけないこと。効果的な順番、使ってはいけない言葉を考えて、話をするようになったからだと思います。立派な立場の方と緊張せずにお話出来るようになりました。これが一番いい事かな。

仕事の内容をネタにする時、制作部(プロダクションマネージャー)の若者を思い浮かべて、「がんばれ。がんばれ」という気持ちで書く時がありますが、そういうコラムを社員教育に使ってくれるCMプロダクションがいくつかあり、「使わせていただきました」という教育係の方や「読んで元気が出ました」という新人の若い子からメールを頂くことが増えてきました。うれしい事です。「ご利用有り難うございます。請求書を送らせていただきます」という丁寧な返事を書く事にしています。

冗談はさておき、性懲りもなく続けてきたこの『番長プロデューサーの世直しコラム』も切りがいいのでこの100回を期に終了とさせていただきます。長い間有り難うございました。

というのは嘘です。

これからも性懲りもなく、思いついた事を気を使いながら書きなぐっていきたいと思いますので、今後とも暇つぶしに読んで頂ければ幸いです。 よろしくお願いします。

櫻木 光

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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