WEB・モバイル2009.06.03

NYの“ひげIT”コンサルタント

Dig It! NYC Vol.8
Dig It! NYC 藤井さゆり

「日本人が日本文化を持って、世界で活躍できるようにITの土壌を作りたい!」 今回はそんな思いを胸に、ニューヨークでITコンサルタントをされている“ひげIT”こと藤崎仁美さんにお会いしました。 スコット・ミラノさん ニューヨークのITコンサルタント“ひげIT”こと藤崎仁美さん

ニューヨークのITコンサルタント“ひげIT”こと藤崎仁美さん

ニューヨークのITコンサルタント“ひげIT”こと藤崎仁美さん

藤崎さん、もともとは、パナソニックのノートパソコン、Let’snoteに付いているホイールパッド(円形のタッチパッド)の発明者であり、ノートパソコンのソフトウェア、サーバーシステムの設計開発をするなど、バリバリの技術者!

現在は、ウェブサイトやカラオケプレイヤーのプログラミングといった技術開発はもちろん、お客様の壊れたパソコン修理から、在ニューヨーク日本人ビジネスマンを対象としたウェブマーケティングのセミナーも行うなど、まさに「ニューヨークでITに困ったら藤崎さんへ!」というほど、幅広くお仕事をされていらっしゃいます。

それにしても…技術開発からウェブマーケティングのセミナーって範囲広すぎます! どうしてこんなにも幅広くお仕事ができるのでしょう??

優れた技術を持っていることはもちろん、お話を伺うに連れて「まずはお客様ありき=カスタマーファースト」という考えが藤崎さんにあるから、ということがわかってきました。

「カスタマーファースト」を掲げるニューヨークのITコンサルタントというお仕事とは? どうやら前職であるパナソニック時代に培われた松下幸之助さんからの大きな影響がありそうです。マンハッタンにある藤崎さんのオフィスで、お話を伺いました。

ニューヨークのITコンサルタントのお仕事

藤崎さんのオフィス

藤崎さんのオフィス

藤崎さんのオフィスは、マンハッタンの中心、ミッドタウンにあります。ブロードウェイミュージカルが開かれる劇場も近くに多く、交通の便も良く、素晴らしいロケーション。ビルの一室にあるオフィスは、コンサルタントを受けるにはちょうど良いスペースで、たいへん居心地の良い空間です。

 
美頼ITソリューションズのウェブサイト

美頼ITソリューションズのウェブサイト

会社名は「美頼(みらい)ITソリューションズ 」。 会社名の「美頼」には、未来という意味はもちろん、ものづくりに必要なキーワードである「機能美、調和、信頼性」という意味も込められています。

 
藤崎さん開発のプラットフォームが使われている「どこ地図NYの食」

藤崎さん開発のプラットフォームが使われている「どこ地図NYの食」

最近手掛けたお仕事としては、ニューヨークにある日本食レストランを地図上で探すことができる「どこ地図NYの食」(http://docochizu.com/)のサーチ機能は、藤崎さん開発のプラットフォームがベースにされています。キーワード、エリア、時間、曜日などで検索するとグーグルマップ上にお店がマーカーとして表示され、リストに店名などが表示されるようになっています。KDDI Mobileの日本語携帯からも利用できるので、ニューヨークで日本食が食べたくなったときにはとても便利なサイトです。

その他、ニューヨーク、ロサンゼルスにあるカラオケチャンプ社のカラオケプレイヤーおよびタッチスクリーン式バーカラオケオーダーシステムの開発を行っています。また、こういった技術開発の他に、「お客様と手をつなぐウェブマーケティング」というテーマでセミナーも行っています。

SEOよりCEO

ウェブ関連では、ウェブサイトのプログラミングも行っている藤崎さんですが、ウェブマーケティングというと技術開発とはちょっと毛色が違う気がしますが…?

「会社を立ち上げた当初、ウェブマーケティングは行っていなかったんです。ですが、去年くらいからお客様よりSEOについて相談を受けるようになりまして…。そこで自分で調べていくうちに、SEOというのは自社のサイトに誘導させるためのきっかけづくりであり、それが第一目的になってはいけないのでは、と。検索で上位に表示させたからといって、それでお客様が満足するわけではない。SEOより、まずはお客様が満足するようなサイトを作る、それが第一目的。そこで考えたのが“CEO”です」

CEO??ですか?

「はい。“Customer and Enduser Optimize”のことです。SEOをもじってCEO。これは今年の2月に私が考えた造語です。この意味は、あなたの企業と、お客様である取引先企業(=Customer)と、実際にサービス・商品を利用する消費者(=Enduser)がwin-win-winの関係になるように、“お客様と消費者を満足させるようなサイト”を作りましょう、ということです。SEOだけに一生懸命になって、たくさんのユーザーがサイトに来たとしても、ユーザーにとって有益な情報がなかったり、コンテンツがわかりにくかったりすれば物を買ってくれませんし、サービスを利用してくれません。CEOはカスタマーファーストであり、SEOはカスタマーボトムと言えるでしょう。お客様のことを最初に考えた場合、CEOありきのSEOなんですね」

SEO対策よりまずはお客様や消費者が満足するようなサイトづくり。セミナーのタイトル「お客様と手をつなぐウェブマーケティング」からもわかるように、藤崎さんにとって「カスタマーファースト」というのは非常に重要な要素であることがわかります。また、相談に来るお客様を藤崎さんが大切にしていることから、このウェブマーケティングのサービスが生まれたと言えるでしょう。

自分の好き嫌いより、お客様の好き嫌いのほうが先

しかし、もともとは技術畑の藤崎さん。技術に全て頼るという方向ではなく、「カスタマーファースト」という考えを最も大切にしているのは、これまでの経験で何かきっかけがあったのでしょうか?

「前職のパナソニック時代には、技術者でも小売店に販売応援に行く、ということが結構ありました。そこでお客様と直接やりとりさせて頂いたことが活かされているのだと思います。でも一番大きい影響として言えるのが松下幸之助さんですね。『お客様第一主義』、『人を大事にする』という考え方は、松下さんからの影響です。そういう意味でやはり、仕事をする上では自分の好き嫌いより、お客様の好き嫌いのほうが先です」

パナソニック時代の経験と、松下幸之助さんの企業理念が藤崎さんの中に根付いているようです。だいぶ前に亡くなられていますが、松下さんは経営者として本当に素晴らしい方だったということがわかります。

サイト分析をして、お客様に満足されるサイト作りを

話は変わりますが、ご自身のブログ「ニューヨークITブログ」ではITに関すること全般に、とても役立つヒントをたくさん書かれていますが、やはりブログを見てお仕事の依頼があったりするのでしょうか?

藤崎さんのブログ「ニューヨークITブログ」

藤崎さんのブログ「ニューヨークITブログ」

「もちろん、ブログを読んで頂いている方へ有益な情報になることを書いていますが、直接お客様を獲得するためにブログを書いているというよりは、ビジネスのブランディングのために書いています。 サイトやブログにやってくるユーザーは、弊社の場合、実際にお客様であることが多いですね。ウェブサイトやブログを見て、技術力がどれだけあるのかをチェックしていることが多いです。なぜそれがわかるかというと、ユーザーのページ推移がグーグルアナリティクスでの分析結果として出てくるからなんです。 ユーザーがサイト内でどのような動きをしているか、どのページで売り上げに結びついているのか、いないのかを分析することで、お客様に満足されるようなサイト作りにつなげることが大切です。ユーザーのページ推移はグーグルアナリティクスを使って簡単にチェックできますよ」

グーグルアナリティクスでのサイト分析についてもブログに書かれています。興味のある方はぜひ藤崎さんのブログをチェックしてみてくださいね。

世界にはばたく日本企業をITで底上げをしたい

「日本人が日本文化を持って世界で活躍できるようにITの土壌を作りたい、世界にはばたく日本企業をITで底上げをしたい!」というのが藤崎さんの夢。 実際に、お客様であるカラオケチャンプ社と一緒に、カラオケという日本文化を通した世界での活躍を目指しているのだそうです。

また、藤崎さんにとって「会社の存在意義というのは社会貢献」であり、「社会貢献をすることよって会社を、人をハッピーにしたい」という願いがあります。

1950年代、松下幸之助は電化製品を数多く生み出すことによって、日本人の生活水準の底上げをしました。結果、高度成長があり人々の暮らしも豊かになり、松下電器産業はパナソニックとして世界に通用する技術を持つ企業へと成長しました。これは大きな社会貢献であり、藤崎さんいわく「それを今の時代でITを持って成し遂げたい!」のだそうです。

現在ならば、日本企業が世界で活躍するためにITはもちろん欠かせないですし、世界を目標にした場合、まずは世界のビジネスの中心であるニューヨークから、というのは理想的と言えるでしょう。 これからも藤崎さんのITと共に、世界へとはばたく日本企業が増えることを心から願っています!!

■美頼ITソリューションズ ウェブサイト http://mirai-it.com/

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
Foxylilly.com
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