自宅での過ごし方がずいぶん変わってきましたね

番長プロデューサーの世直しコラムVol.82
番長プロデューサーの世直しコラム 櫻木光

自分の家に帰ると、最近、本を読む暇がない事に気づきます。 雑誌なんかほとんど買わなくなっちゃったし、小説も読んでいない。 なんでだろう?と、ちょこっと考えたらすぐに解りました。

まず、テレビを見ている姿勢。 最近はテレビを見ている時もテレビと自分の間にiPadかノートパソコンが開かれています。電源は入れっぱなしです。つまり、パソコンとテレビを同時に見ている状態。Facebookは食い入るように見る物ではないので、きっとテレビを見ている合間にちらちらパソコンを見ている。という方が正しいのでしょう。

ただ、それだけではない。それにiPhoneが加わってきます。 テレビを見てようと、パソコンでFacebookをやってようと関係なく、iPhoneにはいろんなヒトからLINEで連絡が入ります。

つまりテレビをつけて、Facebookに書き込みをしたり、書き込まれた事を読んだりしながら、iPhoneで友達と連絡をとる。そういう状態を帰宅してから寝るまで続けているということです。

なんか病気みたいですね。そういう状況でコンビニで買ってきた弁当を食べてたりするんだから、お父さんに見られたら怒鳴りつけられそうです。「ご飯を食べるときにテレビは消せ!」なんて怒られていましたが、「ご飯を食べるときにテレビとパソコンとiPhoneは消せ!」ってことになるんでしょうか?

これじゃあ本を読む暇はありません。 しかしものすごい量の情報が、一気に自分の中に入ってきているんでしょう。

こんな状況はよくないんじゃないかと思って調べると、実は結構多くのヒトがそういう状態で過ごしているみたいで、テレビを見ながら見るコンテンツは「マルチスクリーン」とか「セカンドスクリーン」とか言われているみたいです。

テレビ局も各局、この昨今の人間の行動を理解してるらしく、セカンドスクリーンを活用する動きがあります。当たり前のようにセカンドスクリーン用のアプリなんかも各テレビ局から出ています。番組とリンクした情報をリアルタイムで提供して、視聴者参加型の番組を作ったり、テレビでは伝えきれない情報を追加で伝えたりする事になってるみたいです。

せめてDVDなどで映画を見る時は集中してみようと思う物ですが、そこにも既にセカンドスクリーンという考え方は入ってきていて、ディズニーの映画ソフトを見る時はその映画にリンクした情報を映画を見ながら取り込めるサイトやアプリができていました。

もう、すごい世の中ですね。 5年前には想像もつかなかった状況です。

これじゃ本は読めないなあと、本の心配をしている訳ではありません。 この状況が、テレビでコマーシャルを見る。という行動に対してどう影響がでるのかがとっても心配です。 スマートテレビみたいなことになってテレビとパソコンが融合してしまえばまた状況は変わってくるかも知れませんし、まだまだ変わって行く余地はあります。

かつてCMになるとトイレに行く。とか言われていましたが、今は、CMの時間はFacebookの更新やLINEのチエックの時間に当てられている様な気がします。トイレはいつ行くんじゃい?と思いますが、スマフォを持ってCMの時間にトイレに行く。というヒトは多いんじゃないでしょうか?

それに加え、最近はテレビコマーシャルの素材の使われ方もずいぶんかわってきているのも事実。 youtubeにコンテンツとして常時アップされているもの、 youtubeで動画を見るときに、好む好まないに関わらず最初の5秒は必ず見なきゃいけないもの、 商品のHPにアップされているもの、 バナーをクリックするとCMが流れるもの。 インターネット上でいろんな使われ方をしています。 電車に乗れば、電車のモニターに音を消した字幕入りのCMも流れています。 もはやCMが流れるのはテレビだけではありませんね。

そういうことを意識して制作しなきゃいけないし、企画をしていく上でいろんな可能性を探らなければいけない。媒体によって丁寧に対応していかなきゃいけないんじゃないか?

そもそも、最初の5秒だけ強制的に見せられて、後はスキップできるっていう見せ方もどうしたもんかと思うんですが、これから、またいろいろかわっていくでしょう。試行錯誤の途中段階ですね。ただ、事実は、AKB48を見ようとしておじさんのCMが現れたら5秒ですっ飛ばすのは当たり前です。そこですっ飛ばされない作り方ってあるんだろうか?とか。流す場所を意図的に変えられる用になるんだろうか?とか。

それに加えて最大の敵はHDプレイヤーですね。ハードディスクに録画された番組を見る。 リアルタイムのオンエアじゃなくて自分のタイミングで見る人が増えています。そこに各社、スキップ機能がついていて、CMがぽんぽん飛ばせるようになっています。そこで飛ばされちゃわないようなテレビCMを作る。という緊急の課題もあります。

テレビCMの役割が、昔はアート的だったのに比べて、今は結構な割合でインフォマーシャル的な作りになっています。 その流れの中でスキップされないCMを作る。ということは関わる人みんな巻き込んだ「スキップされないCM作戦」を展開しなければいけないかもしれません。もしくは、そういうことを逆手に取った、一発逆転の発想みたいなものは無いのか? 毎日考えているんですが、これじゃ夜も眠れません。

CMプロデューサーとしては、そんな中でも作ったCMを一人でも多くのヒトに見てもらいたいと思う物です。自分の行動様式を顧みてもやばいなあと思うのです。これじゃテレビでCM見ないよなあと。

そんなこんなで、この変化に対応できないと仕事にならないのです。 つまり、今までの様な、テレビのCMはCM独自の作り方でいいですよ。って時代じゃ無くなっている。いろんな変化にあわせてCMのあり方を理解できないとあっというまに時代遅れになってしまうでしょう。

「テレビコマーシャルのプロデューサーでございます。」と言って生活していないで、その状況の変化に対応した制作スタッフを持っているという、手数の多い「コミニュケーションのプロデューサー」でいないと来年は無い。 そういう時代ですね。

Profile of 櫻木光 (CMプロデューサー)

プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。


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