深掘りシンガポール~ブロックチェーン、NFT、Web3.0編~ #2

Vol.21
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
Junya Oishi
大石 隼矢

Fellows Creative Staff Singapore PTE. LTD.代表の大石隼矢(おおいし じゅんや)です。

いつもコラムをお読みいただきありがとうございます。
第21回目のコラムです。前回はシンガポールのWeb3.0やブロックチェーン、NFT関連についてまとめましたが、今回は「日本」のそれらについてまとめていければと思います。さて、日本のブロックチェーン領域・分野ではいまどんな企業が活躍し、新しいサービスが生まれているのでしょうか?知れば知るほど奥が深いクリエイターと彼らを取り巻く世界!

■3つのブロックチェーン領域

まずあらためて「ブロックチェーン領域」として3つのカテゴリがあることをまとめておきたいと思います。
現在のブロックチェーンは、
ブロックチェーン1.0の仮想通貨プラットフォーム(金融領域)、
ブロックチェーン2.0の金融分散型プラットフォーム(非金融領域)、
ブロックチェーン3.0の非金融多用途プラットフォーム(ハイブリッド領域…非金融×暗号資産)が共生している状態です。

では、順番に見ていきましょう。

  • 金融領域

ブロックチェーンによるビジネスで、もっとも先行しているのが、暗号資産を活用した「金融領域」です。仮想通貨はこの領域に属します。
代表的なものは、以下の3つです。

暗号資産取引

ブロックチェーン技術を用いて行う、法定通貨以外の新しい通貨の取引です。一般的に、取引によるキャピタルゲインを狙います。代表的な暗号資産に、ビットコインやイーサリアムなどがあります。

ICO(イニシャル・コイン・オファリング)

企業などが資金調達を目的として、仮想通貨を新規発行する方法です。新たに独自の仮想通貨を開発し、投資家に購入してもらうのですが、詐欺事件などが起こったこともあり、下火になりつつあります。 「トークンセール」や「トークンオークション」とも呼ばれます。

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)

有価証券機能を付与したトークンを用いて、資金調達を行う方法です。ICOで問題となった詐欺などを仕組みから解消したことで注目されています。金融領域のブロックチェーンにおいて、今後1兆ドル以上のマーケットになるとも予想されている、新しい技術です。

なお、「フィンテック(Fintech)」という言葉は、必ずしも「ブロックチェーンの金融領域」を指すものではありません。この後に説明するハイブリッド領域も、フィンテックと呼ばれることがあります。

  • 非金融領域

非金融領域では、暗号資産(仮想通貨)は使わず、ブロックチェーンの台帳としての役割や、ブロックチェーン技術を応用した真贋証明として用いられます。

一例として、偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータである「NFT(非代替性トークン)」があります。NFTは、今まで困難だった資産的価値をデジタルデータに与え、すでに、デジタルアートが数億円で売買される事例も登場しています。

他にも、著作権などのデジタルな証明、サプライチェーン上の製品の管理、ゲーム内アイテムの取引、電子化した書類の改ざん防止、そしてそれらの技術を組み合わせた窓口業務の自動化などが可能になります。

こうした非金融領域のブロックチェーンは、今後その領域がさらに広がると期待されています。しかし、そのほとんどは、既存産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)として語られ、ブロックチェーン技術が用いられていることは強調されないことでしょう。今後、産業レベルでのイノベーションが起こり、それが実はブロックチェーン技術を用いたものだった…ということが多くなるかも知れません。

  • ハイブリッド領域

ハイブリット領域とは、非金融領域の課題解決に、暗号資産の技術を生かそうとする試みのことです。代表的なものに、「トークンエコノミー」があります。これは、代用通貨(トークン)による経済圏(エコノミー)のことです。例えば、日本は日本円の経済圏、アメリカ合衆国は米ドルの経済圏です。トークンエコノミーも仕組みとしては同じで、そのトークンが使える経済圏ということになります。例えば、「楽天経済圏」とも呼ばれる、楽天ポイントを基軸としたサービスの中には、すでに暗号資産取引所「楽天ウォレット」が組み込まれています。

楽天ウォレットでは、楽天ポイントで暗号資産の購入ができます。暗号資産を運用して得られた運用益は、楽天キャッシュに交換して、楽天市場や楽天ペイが利用できるコンビニ、ファーストフード店などで利用ができます。

この例の場合、ポイントを暗号資産に変換した時点から、最終的にコンビニやファーストフード店で利用するまでの間に、中央銀行が発行した通貨を一切介しません。これが、わかりやすいトークンエコノミーの例です。

トークンエコノミーに代表されるハイブリット領域は、非常に難しい領域でもあります。これまで登場した新興サービスの多くは1年も経たずに消える傾向があり、三菱UFJ銀行とリクルートが共同で開発している「COIN+」も普及にはほど遠い状況ですし、楽天ウォレットも普及しているとは言えません。

理想を描ける反面、実現には数々のハードルがあり、理想的なトークンエコノミーの実現にはまだ課題が多く残っているというのが実情です。

■日本発のブロックチェーン技術・Web3関連のサービスや企業

現在、私はシンガポールに住んで3年目を迎えましたが、この国でも日本のブロックチェーンの技術は注目されている市場の一つです。日本人のブロックチェーンに関わる技術者たちがシンガポールの企業に雇われるケースが増えているという話も耳にしたことがあります。

さてすこし専門的になりますが、ブロックチェーンをはじめとする技術を利用し、情報を分散管理することで、巨大企業による独占からの脱却を目指そうとしているのが、Web3.0と呼ばれる概念。上記で触れたトークンエコノミー(トークネコノミー)と合わせて今後活躍をしていくクリエイターにとって注目せざるを得ないワードになってくるでしょう。下記では私が独断と偏見で選んだ“個人的注目の”クリエイティブ分野で頭角を現す企業3選です!

個人的注目1)CryptoGames社

NFTを活用したブロックチェーン×エンタメ領域で事業を展開し、自社IPのブロックチェーンゲーム「クリプトスペルズ」や無料でNFTが発行できる「NFTStudio」の提供をしている

個人的注目2)Gaudiy 社

“ファン、企業、クリエイターなどの境界線をこわし、誰もが創作や貢献のできる環境を” をメッセージに、NFTや分散型IDといったブロックチェーン技術を活用して、ファンの熱量を最大化するWeb3.0時代のファンプラットフォームを提供している

個人的注目3)Startbahn社

“クリエイティブ産業のためのブロックチェーン基盤の構築“をウェブサイトのトップページに掲げている

ブロックチェーンと聞くと小難しく、Web3.0と聞くとなんだか得体のしれない概念・・・と敬遠してしまう方もいると思いますが、上記のような企業のサービスページを見るといかがでしょう?「へ~、こんなサービスが生まれているんだ!」というちょっとした感動を覚えませんか?特にクリエイティブ産業に関わる人はチラッと覗いてみるだけで後れを取り戻せるかもしれません。

■ちなみに日本国内でのルールや規制などについての声

ポジティブな情報をまとめてきましたが、ここでネガティブな側面についても調べてみました。現在、最も話題となっている一つはNFTに関する法規制です。以下、PWC社がまとめたNFTおよびブロックチェーン技術における日本国内の現状や法規制についての記事からの抜粋です。

“NFTに関連する法規制にはさまざまなものがあります。~ 法規制の対象となると、NFTの発行等に関して金融商品取引法上の登録等が必要となり、事業遂行の支障となり得ます。”

この記事で取り上げられているだけでも、金融商品取引法、資金決済法、銀行法、刑法、景品表示法など多くの法律を確認しながら、自社の事業やサービスを展開していかなければならない、ということでしょう。

実際、私の高校時代の友人が関連サービスの立ち上げに試みているのですが、「暗号資産については法人税の対象になる可能性があってやりづらい」と嘆いていました。シンガポールやドバイなど税規制の比較的緩い国に会社を設立しサービス展開する動きが増えているのは、そういった法規制に因るところも大きいと思います。

まとめ

今回は日本におけるブロックチェーン、Web3.0、そしてNFTに関連した企業やサービスについて触れてみました。私の周りにいるシンガポールの経営者や起業家の方々は、日本の技術に対して常に動向を注視しているように見えます。また実際に日本の企業がシンガポールで暗号資産やNFTに関するサービスを展開しようとビジネスデベロップメントしている話も聞いています。大衆に広く認知され、「私の生活の一部」と言えるには少し先になりそうですが、NFTアートの購入や利用しているサービスが実はブロックチェーン技術を活用しているモノだった、という状況はすぐそばまで来ているかもしれませんね。

※掲載の社名、商品名、サービス名ほか各種名称は、各社の商標または登録商標です。

引用元:
https://www.e-xtreme.co.jp/topics/48687/
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd134620.html
http://www3.keizaireport.com/report.php/RID/274705/
https://note.com/upbond31/n/n796b1d9140dd
https://www.upbond.io/
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/prmagazine/pwcs-view/202205/38-06.html

 

プロフィール
Fellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd. エージェント/マネージングディレクター
大石 隼矢
1990年 静岡県焼津市生まれ。小さいころからサッカーに魅了され、日韓ワールドカップで来日したデイビッド・ベッカムの話す英語に衝撃を受け、自分も話せるようになりたい!と大学は外国語大学へ。2010年カナダ・ウエスタンオンタリオ大学へ交換留学。2012年株式会社フェローズ入社。ブロードキャスト・ビジュアルセクション。2020年4月にフェローズ初の海外拠点であるFellows Creative Staff Singapore Pte. Ltd.の責任者に就任。好きなバンドはOasis、最近の趣味はNetflixで英語学習、尊敬する歴史上の人物は吉田松陰と白洲次郎、好きな食べ物はカレーライスとらっきょう、嫌いな食べ物はかぼちゃと大学芋、みずがめ座B型、佐々木希とジェームズディーンと富岡義勇(鬼滅の刃)と同じ誕生日。
Twitter:@junya_oishi
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