WEB・モバイル2010.02.08

NYのちょいユルなミュージアム

Dig It! NYC Vol.16
Dig It! NYC 藤井さゆり

ふと、「NYで最近できた美術館に行きたい!」と思い、“new museum NY”でググってみたところ、一番最初に出来たのがこちら。その名も「NEW MUSEUM」。

NEW MUSEUM外観

NEW MUSEUM外観

拡大した「HELL YES!」

拡大した「HELL YES!」

 

ボックスが積み上げられたようなユニークな外観と、ビルの2階部分に付いているレインボーカラーの「HELL YES!」がひときわ目立つこの「NEW MUSEUM」、もともとは30年前にマンハッタンのダウンタウンエリアの1つ、トライベッカにオープンしたのが最初。その後、2007年の12月にロウアーイーストサイドとソーホーの間のバウリー通りに移転、今の形となって新しくオープンしました。今よりも小さなスペースで行っていた30年前からのコンセプトと変わらず“新しい時代”のコンテンポラリーアートを扱っています。

現在は、おしゃれなお店やカフェが並ぶロウアーイーストサイドですが、その中でもバウリー通りは、数年前までホームレスなどがたむろしており、あまり安全ではない場所だったそう。この美術館のオープンを期に、周辺に小さなギャラリーが増えてきたようです。

気になるのがこのユニークな外観。実はこのビルの設計、日本人が手掛けています。東京・表参道のディオールなどを手掛けた、妹島和世さんと西沢立衛さんのSANAAという建築家ユニットによるもの。周辺の雰囲気と比べて、このインパクト、このコントラスト…面白い!

ビルの形以外に目を引くのが、外観に設置されたレインボーカラーの“HELL YES!”。私はこれが美術館のロゴとばかり思っていたのですが、Ugo Rondinoneというスイス出身のアーティストによるアート作品の1つ。レインボーカラーも「HELL YES!」(もちろーん!)という言葉もよいですし、ビルのデザインとマッチしていて、とってもNYっぽさを感じます。この展示、今年の7月で終了してしまうですが、それ以降も同じ場所に次の作品が展示されるのかは謎。されるとしたら同じくらい目を引く作品を期待したいところです。

中はこざっぱりしていて、シンプルでモダンな印象。1階に簡単なカフェとショップがあり、「美術館に訪れました」的な感じではなく、全体的に、気軽に立ち寄れるお店のよう。それぞれのフロアはそんなに大きくなく、倉庫をキレイにしたような雰囲気です。地下にはシアターがあり、7階の最上階にはNYの街を一望できる小さな展望スペースもあります。

今回、2階から4階までのフロアには、Urs Fischerという、こちらもスイス出身のアーティストの作品が展示されていました。ぐんにゃりしているグランドピアノと椅子や、穴をのぞくと急に舌が出てくるインスタレーションなど、ちょっぴりヘンで遊び心があるアート。どれも歴史や素材など、難しいことを考えずに楽しめるものばかり。なんだか作者から遊び心を刺激された感じです。

Urs Fischer, Untitled, 2009. Mixed mediums, dimensions variable. Courtesy the artist; Sadie Coles HQ, London; Gavin Brown's enterprise, New York; and Galerie Eva Presenhuber, Zurich. Installation view: “Urs Fischer: Marguerite de Ponty.” Photograph by Benoit Pailley.

Urs Fischer, Untitled, 2009. Mixed mediums, dimensions variable. Courtesy the artist; Sadie Coles HQ, London; Gavin Brown's enterprise, New York; and Galerie Eva Presenhuber, Zurich. Installation view: “Urs Fischer: Marguerite de Ponty.” Photograph by Benoit Pailley.

Urs Fischer, Noisette, 2009. Mixed mediums, dimensions variable. Courtesy the artist; Gavin Brown's enterprise, New York; Sadie Coles HQ, London, and Galerie Eva Presenhuber, Zurich.

Urs Fischer, Noisette, 2009. Mixed mediums, dimensions variable. Courtesy the artist; Gavin Brown's enterprise, New York; Sadie Coles HQ, London, and Galerie Eva Presenhuber, Zurich.

 

全体の印象としては、ふらっと立ち寄れるような雰囲気がイイです。スタッフの人たちもフレンドリーで、仕事中にiPhoneでメールチェックしていた人もいたくらい、ユルい。ニューヨークの多くの美術館では、作品に触れていないかなど私たちを監視しているような節があるというのに、先ほどの舌アートの前では「センサーが反応して穴の中から舌が出てくるんだ」という仕掛けをスタッフが親切に教えてくれました。

ジツは、このコラムを書くにあたり、いくつか東京の美術館のサイトをチェックしていたところ、概要やミッションについての記述が「美術館の活動方針」やら「○○事業」など、細かくて長くて堅い印象があったんです。

しかし、「New Museum」のミッションは、

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これだけ。超簡潔!

美術館の名前も、新しいアートを見せるから「New Museum」。これに尽きる、という感じでしょうか。カンタンすぎ!ってツッコみたいですが…きっと、奥が深いんだと思います。

ミッションが簡潔だから、これからもいろんなことがブレないような気がします。クリエイティブをする場合、難しいお題目は必要ないんだと思います。人生のミッションも、仕事のミッションも、このくらいシンプルに行きたいものです。

■NEW MEUSEUM 公式ページ http://www.newmuseum.org/

Profile of 藤井さゆり

藤井さゆり

東京生まれ、アメリカ在住。日本とアメリカでの職務経験あり。
東京丸の内にある公益法人にて8年間勤務の傍ら、友人が企画したクラブイベントのフライヤーや、CDジャケットのデザインを行う。
公益法人では「地方の街づくり・街おこし」支援事業の一環で、ウェブサイト業務に携わる。 公益法人退職後、2004年より4年間、都内商業施設のサイト更新・管理、販促サイトのキャンペーンページ企画と取材・撮影を含めたライティングワーク、ウェブデザインを経験。
2008年ニューヨークに移住。ニューヨークではウェブマーケティング、サイト管理を企業にて経験、それと共にウェブデザインとライティングワークをフリーランスとして行う。現在は日本の着物をインスパイアしたオリジナルTシャツブランド「Foxy Lilly」を立ち上げ、オーナー兼デザイナーを務める。
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