がんばれおじさんおばさん

Vol.172
CMプロデューサー
Hikaru Sakuragi
櫻木 光

僕がここで、このコラムを書き始めた14年前はまだ30代だったこともあり、

なんというか自分より若い人に「頑張ろうぜ」とか、「俺もやるからお前らもやれ」的なニュアンスの

「サラリーマン金太郎」的な気分でコラムを書いていた記憶があります。

 

偉そうに。だから番長コラムとか言って恥ずかしくなかったんでしょう。

実際、仕事の時はめちゃくちゃ威張ってましたしね。怒鳴ったりしてましたし。

 

だけどここ数年、ずいぶん空気が変わってきたもんだと感じていました。

実際のコラムの中でもそういう変化について書くことも多くなってきました。

それが、このコロナ禍で何かが完全に変わったような匂いがしてきました。

 

何がどうなっちゃったんでしょう?

仕事の経験の少ない若者に助言をするということより、

変化についていけないベテランの人たちに物申す必要の方が大きくなってきた。

と感じています。

 

まず、働き方を変えられざるをえなくなって、リモートワークやフレックスな働き方をするようになりました。

近年、働き方改革といってずいぶん意識を変える必要に迫られていたり

部下の勤務時間を事細かにチェックするようになってきていましたが

コロナで外に出るなという世の中になって一気に変わりましたね。

 

「不要不急の外出は控えろ」というお達しの中、パソコンとwi-fiがあれば意外にどこでも仕事ができるんだ。

という気分になった人も多いでしょう。

会社員なんだから必ず出社して、忖度して先輩の帰るのを待つ。みたいな事が無駄だということがハッキリしました。

 

また、企業のオフィスの形態も本社ビルをドーンと構えたり、全員の机が必要だったりすることもなく、

コスト削除のためにシェアオフィス業態も人気になり、臨機応変に働く場所を変えるというような動きもあります。

 

こういうことは徐々に変わってきてはいましたが、コロナのせいで一気に加速した感がありますね。

思い切って地方に引っ越して今までと同じ仕事をする人も周りにいます。

 

そうなってくると、今度は会社員の雇い方も変わってくる。

もうすでに価値がないと言われ始めていた「年功序列」「終身雇用」というあり方から

その仕事に応じたスキルを持った人が集まって働く「ジョブ方雇用」に急速に進んでいくんでしょう。

 

従来のメンバーシップ型雇用は、つまりは『就職するというよりは就社する』というニュアンスの、

新卒の学生を会社の都合の良い人材に育てるようなやり方で、

「力があろうがなかろうが、長い間勤めて会社の空気感を知っている人」が重宝される。

そう言う人を抱えてきたのは事実です。ある意味安定した会社人生ですね。

 

それがジョブ型雇用になると、勤続年数や年齢は関係なくその人の実力と人気を問われます。

ここ数年言われていた成果主義という考え方でしょう。

 

また、なぜかこのコロナ禍で加速した風潮の中に、社会を構成する人間のあり方の中で

LGBTQ+と言われるセクシャルマイノリティの人に対しての理解、またジェンダー平等に対する意識も厳しく求められるようになりました。

 

日本には、まだ親戚のおじさんみたいな考えの人がいっぱいいて、

そこをいまいち理解できず親戚の集まりで姪っ子に言うような気分で

「お前おっぱい大きくなってきたなあ」的な冗談を公の場で女性に言っちゃって、袋叩きにあって失職したりする人がいます。

 

オリンピックの偉い人がまさにそうでした。

昔から変なことばっかり言うどうしようもないおじさんでしたが、

最近の空気の中でついに許してもらえず、退場させられてしまいました。

 

会社の会議で話題になったことで驚いたのは、

部下を呼ぶときに、男の社員でも「〜〜君」と呼んではいけない。

と言うのがありました。

え?なんで?って聞き返したら

「今の世の中、見てくれは君でも中身は君(くん)ではないことも普通にあります。だから社員の呼び方は~~さんで統一してください」とのことでした。

まあね、そうなるよな。と。

 

セクシャル的なハラスメントに加え、相変わらずパワハラの問題も大きいですね。

部下が失敗しても手を抜いても上司は声を荒らげて怒ってはいけません。

ちゃんと理由を聞いて、理解して今後の再発の防止と対策をする。という冷静さが求められています。

 

コロナ禍で出社しなくてもある程度仕事ができるのがバレちゃって、

直接顔を合わせる機会が減ると、上司が威張ってるような風潮でもなくなりました。

昔だと、案件が発生すると会社で部下を呼んで「お前これやっとけ、よろしく」ってやってたようなことも、

今はメールで

「こう言う案件が発生しましたが、〇〇さんのスケジュールはどうでしょう?」

とか聞いて

「いいですよ、別に。空いてますからやります」

みたいな返事が来て

「よかった、それではお願いします。キックオフの打ち合わせは〇〇日です。」

なんてやりとり。気を使っちゃって大変です。

 

上司は、会社をすぐ辞めちゃう若者たちにビクビクしています。

 

昭和のおじさんたちも、ルールが変わったこと、そんな世の中になったことをちゃんと理解しないと、

ジョブ方雇用の時代に仕事ができても大事なことがわかっていない人」という判断をされてしまうのです。

 

自分たちが仕事を始めたときに流行っていたコピーは「24時間働けますか?」でした。

文字通りみんなそう言う働き方をしていたし、それが偉かったんです。

野球の試合のように、決着がつくまで意味なく延々延長戦を戦っていました。

 

今は本当にいい世の中になりました。そもそもこうあるべきだったんです。

僕らの若い頃は、訳のわからない理不尽をずいぶん我慢していました。

そんなもんだろうと諦めて受け入れたことがどれだけあったことか。

その期間もずいぶん長かったような気もします。

 

そんなこんなで、いい時代なのに関わらず、僕らおじさん世代にはなんとも生きにくい時代になってきました。

若い時は上に虐げられ、歳をとったら下に気を使う。という流れです。

水が清すぎてくだらない冗談を言っただけで職を失うような社会に管理職か。

 

そういった自分たちと若者たちの間にできた価値観の違いを理解しないと、年長者は苦しんでばかりになりますね。

 

今の若者たちの考えていること、望んでいることをちゃんと考えたら驚くべき事がわかります。

驚くべきことというか当たり前にそうなるよなあということです。

 

まず、若い世代は理不尽が嫌いです。

若い世代はヨコ社会です。タテ社会は彼ら彼女らにとってはただの理不尽です。

ヨコ社会とは個人と個人の対等な関係を重視する社会です。

SNSなどで色んな人と繋がれるので色んな価値観を知っています。

会社の価値観なんてのはあまり大事なものではないと思っています。

 

上に書いたようにメンバーシップ型の雇用の時代は、「上長の理不尽を如何に受け止められるか」が出世の鍵みたいなところがありました。

今のジョブ方雇用に変わっていった社会ではそのタテの関係を大切にしても評価はされないし、いい事も、先のリターンもあまりない。

我慢するだけ損、だと思っています。

 

上司として「いいからやってみろ」的な仕事のさせ方は大NGだそうです。

最短で答えを求める気分が強いため、やる意味のわからない仕事に対してのアレルギーが半端ないそうです。

また、わからない事でもググれば結構解決策が見つかるので、上司の経験とか知恵とかもそんなにありがたくないんだそうです。

 

そして、会社はもはや長く住む場所ではなくて、乗り換え前提の乗り物みたいなものだそうです。

成長欲や社会貢献欲は異様に高く、この会社で得るものはもうないと判断したら、すぐ次のことを考える。

ただ、最終的にはどこに行き着くのかは霧の中だそうです。そこに少し迷いがあるんだとか。

 

そして、一番怖いのは「若い世代は今管理職の世代を無視し始めている」ということです。

 

社会貢献への意識が強いのが若い世代です。ソーシャルグッド的なものを就職先の企業にも求めていたりします。

そんな観点からすると、会社の中で椅子取りゲームばかりしているおじさんたちのやっていることは浅ましく残念です。

他にやることあるんじゃないですか?

 

だから無視するのは「こんなに悪い時代になっちゃったのに、おっさんたちは何の手も打たなかったじゃないか」という理由だそうです。

「ダメだこいつら。そういう奴らの言うことを聞いても無駄だ」と。

「喧嘩して嫌な思いするのも無駄だから聞いたふりして無視してしまおう。と思っている」と言っていました。

 

そういう若い世代に無視されないように「マナー」や「ルール」「社会的意識」

「おじさんにしかできない何か」をちゃんと意識しないと本当に無視されます。

 

がむしゃらに働いた昭和が「巨人の星」「タイガーマスク」タイプだとすると、

平成は修行してスキルを身につけて敵を打ち負かす「ドラゴンボール」「スラムダンク」タイプ。

令和は仲間と共にお互いに助け合いながら成長していく「ワンピース」「キングダム」タイプ。が仕事の気分なんだそうです。

 

わざわざ若者に媚びる必要はありません。

逆に媚びたら敏感に察知されてまたバカにされてしまうみたいですが、

社会の変化と若者の感覚の違いを順に追って理解する努力をしないと

おじさんたちはもう職場では長くはないという覚悟をしなければいけなくなりますね。

 

怖いものです。

 

プロフィール
CMプロデューサー
櫻木 光
プロデューサーと言ってもいろんなタイプがいると思いますが、矢面に立つのは当たり前と仕事をしていたら、ついたあだ名が「番長」でした。

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