WEB・モバイル2020.07.10

紫陽花の歌

東京
WEBクリエイター
日本文化×デザインあれこれ
いのうえ

全国各地で雨の多いこの頃ですが、如何お過ごしでしょうか。
九州での水害については一日も早い収束を祈るばかりです。

私は雨の季節は紫陽花を見て風情を感じる事があります。
今日は紫陽花を題材にした短歌をご紹介します。

万葉集紫陽花の歌は2首

万葉集は4500首あまりを収録した歌集です。
恋の歌や、移ろう季節を歌ったものなど様々あるのですが、紫陽花の歌は2首のみです。
私としては少ないという印象を受けたのですが、これは紫陽花が観賞用として一般化されていなかったのが理由の1つだと思います。
ちなみに一番多く詠まれている植物は萩です。
中秋の名月にはお団子と一緒に添えられる文化がありますし、古くから親しみのある植物が詠まれるのは納得ですね。

さて、紫陽花の話に戻りましょう。紫陽花の歌を1首ご紹介します。

あぢさゐの 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)/橘諸兄(たちばなのもろえ)

現代語訳:八重に咲く紫陽花のように、貴方様もいつまでもご健勝でいてください。そしてこの花を眺めては貴方を思い出しましょう。

八重に咲く紫陽花を「八つ代」=長い年月に例えています。「いませ」は生きて下さいの意味。背子は親しい人を表す言葉です。
いつまでも健やかであって欲しいという想いを「紫陽花」に形容する感性にはっとします。
紫陽花に想いを乗せる事により、二人の間で紫陽花が特別な花になるのです。

これは恋愛の歌のようにも取れますが、実は宴で読まれた歌なのです。
橘諸兄が宴の主人に向けて詠んだ歌とされています。

短歌の美しい日本語表現を、自分の大切な人にも贈れる人でありたいと改めて思ったのでした。

プロフィール
WEBクリエイター
いのうえ
WEBクリエイター(デザイン/コーディング) サイトリニューアル、デザインの他、企業系大規模サイト、ECサイトの制作・運営などに携わる。fellowsでのセミナー講師経験もあり。 ここでは個人的に情報収集・発信している日本文化とデザインについて紹介していきます。

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