ゴールデンカムイの謎 その9 チタタㇷ゚の正しい作り方

北海道
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

ゴールデンカムイ15

前話、前々話でリスを捕えたアシㇼパは、さっそくさばいて料理に仕立てていく。
皮をはぎ、丸太を輪切りにした肉切り台に載せる。そのまま山刀で叩き刻んでミンチ状にしていく。
数々のグルメシーンが物語のエッセンスとして効いているマンガ・ゴールデンカムイ。
北海道伝統の食文化ながら、いままでほとんど取り上げられていなかった「アイヌ料理」をメジャーにした意味でも意義深いマンガである。

 

さて、アシㇼパは肉切り台の上でリスを刻んでミンチにする。ゴールデンカムイを通じて有名になった料理「チタタㇷ゚」だ。
チタタㇷ゚とは、直訳すれば「我らが叩いたもの」の意。
ナラの木など硬い材質の木を輪切りにして作った肉切り台「イタタニ」、
直訳すれば「それを叩く木」に載せて丹念に叩き刻む。
硬い材質の木材で作られた肉切り台だが、使い込めば自然とすり減る。

そのためアイヌ語の言い回しでは、背の低い者を「イソンクㇽ・イタタニ」(狩り名人の肉切り台)、
背の高い者を「イペサクㇽ・イタタニ」(狩り下手の肉切り台)と呼ぶ。

 アシㇼパも、それをまねた杉元も、イタタニの上でミンチ肉を叩く。
彼女に習い、「チタタプ、チタタプ」と口ずさみながら叩く。
以降マンガの物語世界ではチタタㇷ゚を作るたびにこのセリフが登場する。
敵か味方かわからない緒方も、新選組の生き残りも口ずさむ。

 ゴールデンカムイファンのお気に入りの場面

だが、これはマンガ的な設定である。
いにしえのアイヌ民族がチタタㇷ゚を刻むさいに、あえてこの言葉を発することは無かった。

恐らくは作者の野田サトル氏が、参考文献「アイヌの四季」を改めた折、

説明分の一節

 「チタタㇷ゚ チタタㇷ゚ というように叩く」

 から創作した設定だろう。

 だが、実に絵になる光景である。
皆で唱和しながらチタタㇷ゚チタタㇷ゚する。
ドロドロとした人間関係が練り混ぜられて昇華し、滋味が醸し出される。
実に旨いアクセントではなかろうか。

 ちなみに参考文献『聞き書き アイヌの食事』によれば、
リスのチタタㇷ゚は味が濃く、少量食べても飽きが来るということだ。
さすがに杉元の消化器官が受け付けないことはないだろうが

※参考文献

『日本の食生活全集48 アイヌの食事』農文協 1992

『アイヌの四季』計良智子、鍛冶明美 明石書店 1995

 

プロフィール
フリーライター
角田陽一
1974年生まれ、2004年よりフリーライター。アウトドア、北海道の歴史文化を中心に執筆。著書に『図解アイヌ』(2018年 新紀元社)、執筆協力に『カラー版 1時間でわかるアイヌの文化と歴史』(2019年 宝島社)など

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