ゴールデンカムイの謎 その19 アシㇼパの村に見る、アイヌの子どもの髪型

北海道
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

ゴールデンカムイ2巻

 

画像はamazonより

アシㇼパの村でアイヌの風習を習う杉元。
動物の姿になって人間に恵みを施す神々の逸話に感心し、「カワウソの脳みそ鍋」を味わう。
皮を剥ぎ取られ、筋肉組織が露出し、しっかり煮込まれたカワウソ鍋。

それが美味かったかどうかはさておいて。

 カワウソ鍋を食らい、「キサㇻリ」(耳長お化け)を操る杉元に興味津々の子どもたち。
さて、この子どもたちをよく見ていただきたい。
彼らの髪型は様々だ。

いささか年長のマッカチ(女の子)はおかっぱ頭。
一方で多少は幼いヘカチ(男の子)の髪型は多少のバリエーションがある。

明治後期の和人の学童そのままの坊主頭の子がひとり。
それ以外の子は、独特の髪型をしている。

 「頭を剃り上げ、額の部分のみ多少の髪を残す」

 この髪型こそ、アイヌプリ(アイヌ式)である。

 男女の差のない
アイヌの大人の髪型

 アイヌの髪型は、大人であれば男女の差はない。
男女ともに、肩のあたりで切りそろえる。
儀礼に臨んで正装する場合は桂の木の灰を溶かした水で洗ったうえ、キライ(櫛)で丁寧に梳いて「真ん中わけ」にする。
男性、特に樺太アイヌの場合は、前髪を多少そり上げる場合もある。

これは、和人の月代と関係があるのかは不明である。

 

地域でバリエーション豊富
アイヌの子どもの髪型

 一方で子どもの場合は、バリエーション豊富。

北海道西部、アシㇼパのコタンを含む石狩地方、あるいは太平洋沿岸の胆振・日高地方では、4歳以上の子どもは男女の別なく髪の大半を剃り上げる。
頭頂部と前髪、もみあげの付近に多少の髪を残し、他はすべて剃ってしまう

 下の絵は、江戸時代後期に和人の絵師・平沢屏山が描いた『日高アイヌ之オムシャ図』の一部分。アイヌの村長たちと和人の役人の謁見行事「オムシャ」を見物している女性や子供たちの姿である。

 

※函館中央図書館所蔵(部分)

 口元に入れ墨を施した成人女性は肩までおかっぱ頭。
そして子どもたちは、前髪ともみあげ、後頭部の一部に髪を残した姿。

 さらに北海道東部・十勝地方では頭頂部ともみあげに多少の髪を残し、他はすべて剃ってしまう。一方で釧路地方では、もみあげの毛は剃るものの、それより上の髪はすべて残す。

 北海道内だけでも様々なアイヌの子どもの伝統的な髪型。

 そのあたりは拙著『図解アイヌ』のp153でも解説されているので、ぜひご覧いただきたい。

 

 画像はamazonより

※参考文献
『アイヌ民族誌』第一法規出版 1970年

 

プロフィール
フリーライター
角田陽一
1974年、北海道生まれ。2004年よりフリーライター。アウトドア、グルメ、北海道の歴史文化を中心に執筆中。著書に『図解アイヌ』(新紀元社 2018年)。執筆協力に『1時間でわかるアイヌの文化と歴史』(宝島社 2019年)、『アイヌの真実』(ベストセラーズ 2020年)など。  

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