ゴールデンカムイの謎 その18 アイヌの遊び

北海道
フリーライター
youichi tsunoda
角田陽一

ゴールデンカムイ2巻。
アシㇼパの村で杉元が「カワウソの脳みそ鍋」を味わう。
食後の余興に「キサㇻリ」(耳長お化け)で村の子供たちを驚かす。

このキサㇻリが後々の重要な伏線になる、のはさておいて。

 子どもたちは伝統の遊びに興じている
ヤマブドウやコクワ(サルナシ)の蔓を編んで作った「輪」を放り上げ、落ちてきたところを棒で受ける、あるいは矢で貫く。これはアイヌ伝統の遊びである
元来は狩猟・漁労民族であるアイヌ。子供たちの遊びは自然と「将来の狩りの備えとなる遊び」が多い。今回は、そんなアイヌの伝統的な「児戯」を紹介したい。

 

輪突き遊び

アイヌ語では「アカㇺカチウ」と呼ばれる遊び。輪を放り上げ、落ちてきたところを棒や矢で貫く。

将来、優秀な狩人として身を立てるための備え「弓」「槍」の練習となる遊びである。最初は大きい輪から始めるが、熟練するにつれてどんどん輪を小さくして、さらなる域へと高めていく。ある程度の上級者がうっかり輪を受け損なえば、思いっきり罵倒されるので油断できない。

 なおゴールデンカムイで子供たちが興じている場面では「ウコ・カリㇷ゚・チュイ」と名称が記されているが、これは「互いに輪を投げる」の意味。アカㇺカチウを発展させた、チーム制、ゲーム性のある遊びである。
まずメンバー同数の2チームに分かれる。ゲーム開始と共に、1チームが対戦チームに輪を投げつける。投げつけられたら棒で輪を受けるが、受け損なえばメンバーをひとり対戦メンバーに取られる。これを繰り返し、先に全滅したほうが負け。

 

 ・弓遊び
アイヌ語ではク・エ・シノッと呼ばれる。ホタテ貝、あるいは雪玉を的にして矢を射る。
静止状態のまま射る場合もあるが、上達すれば投げたり転がしたり、「動く的」を射る 

カジキ突き
アイヌ語ではシリカㇷ゚カチュ(カジキ突き)と呼ばれる遊び。
まず枯草を束ねて「カジキマグロ」の模型を作る。障害物のない広場に子供たちが集まり、一団の中で特に足の速い子供が腰にロープを付け、カジキの模型を繋いで走り回る。他の子供たちは、引きずられる「カジキ」めがけて一斉に槍を投げつける。

 
将来のアザラシやオットセイ、クジラ漁の鍛錬となる、漁村の遊びである。

 ※参考文献
『アイヌ民族誌 下巻』第一法規出版 1970年

プロフィール
フリーライター
角田陽一
1974年、北海道生まれ。2004年よりフリーライター。食文化やアウトドア、故郷・北海道の歴史や文化をモチーフに執筆中。 著書に『図解アイヌ』新紀元社 2018年、執筆協力に『1時間でわかるアイヌの文化と歴史』宝島社新書 2019年、『アイヌの真実』ベストセラーズ 2020年など。

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